DreamCraft Staff: 2002年4月アーカイブ

光ファイバーによる通信は、広帯域で安定した品質のよいネットワークとして知られているのと同時に、NTTによって独占されてきた感のある媒体だ。その強力な独占体制にダークホースが出現した。
平成13年12月に東京電力株式会社は第1種電気通信事業者免許を取得した。そして2002年3月から試験的に都内(目黒区、大田区、世田谷区)の一部でFTTH(光ファイバーを家庭まで引き込むネットワークサービス)を開始したのだ。最大100Mbpsのベストエフォート接続ではあるが、かなり短期間で光ファイバー網を構築可能な同社のポテンシャルを検証したい。

ご存知のように東京電力は関東で電気を供給する独占事業体だ。電話を利用しない家庭はあっても、電気を使用しないことはめったにない位、津々浦々まで電気の供給体制と、ケーブル保守の体制は徹底して保有している。そのうえ、同社は道路の脇に設置されている電信柱やマンフォールの大半の管理権も有している。新たな光ファイバー工事にも既存業務の枠を超えずに対応が可能なのだ。
さらに、電気というリアルタイムに消費する商品を扱うため、発電所から、変電所、末端の家庭に送る電信柱のトランスまで、大規模な電力保安通信用、光ファイバーネットワークを、以前からすでに構築済みの事業者なのだ。

IT化による高速データ通信網への要望が高まる中、光メディアを扱う設備機器は高額なため普及の妨げになっていた。それが近年の構築コスト(光ファイバーの接続には溶着機と呼ばれる装置が必要だったが、簡便な接続キットの性能が良くなった)の低下や、機器コスト(ファイバーを中継する光アンプ、エンクロージャーなどやイーサネットへ変換するメディアコンバーターなどの価格が劇的に下がった)の低下などによって、にわかに事業化に向けた現実感が浮上してきたのだ。
また、光通信の技術進歩による多重化通信がもたらしたものは、従来用意していた保安用幹線から多くの余剰を生み出すことになった。
いわゆるダークファイバー(光ファイバー芯線貸し)を第1種通信事業者や放送事業者へ貸し出す事業を平成11年10月から開始したのは、こうした背景があったのだ。

さて、今回のFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)参入はISP事業を含まない完全な回線のホールセールだ。
既存ISPは、東京電力への相互接続により加入者単位で帯域貸しをベストエフォートで実施できることが特徴だ。共用利用するデータセンターへ各ISPがコロケーション施設をレンタルすればよいのだ。
FTTH事業を東京電力の関連ISP会社(TTNetやスピードネット)での囲い込み事業化にしない点が、オープンな社会インフラとして評価される。

東京電力の光ネットワーク・カンパニー・ゼネラルマネージャー、田代氏が、筆者のインタビューに答えてこう語ってくれた。

田代氏談
電気と言うのは溜めておけないので、電力需要に応じて発電所を止めたり動かしたりその間のネットワーク、送電線、配電線というネットワークを制御している。
雷が落ちたら遠隔で止めたり、開けたり、そう言うことをやるもんですから、通信手段というのはもともと電力と一体となって装備してきたと言う実績が有ります。
東京電力本体には電子通信部というのが有りまして、管理用ネットワークを専用にお守をしている。
管理用ネットワークは、主に3つの通信手段が有ります。
1:無線
東京電力本社の屋上に高い塔が立っていてそこに円盤つけて飛ばしている。
地震の時に特に有効です。阪神大震災の時、関西電力の事業所というのは倒れないのですが、電柱とか電線に瓦が落ちてきたとかビルが傾いたとかで切れる場合が有る。
そう言う時にマイクロ波無線でやれば両方の建物が生きていれば通信手段が確保出来るので無線というのを整備している。
2:衛星
これも阪神大震災の時は通信車が向こうに行って復旧に当たるとか、後ダムに水力発電を作る時、光を引くのは大変なので、テンポラリーですからそこに一時的に衛星基地を置いて、ダムを作り終わったらそれを撤去する。簡単だということでそういう手段を取っています。
3:光ケーブル
主力になるのは地上を走る光ケーブルで、変電所の監視とか制御とかモニターであるとか、お客様情報(大型コンピュータ内でやり取りする)を光ファイバーで管理しています。
後過去15年ぐらい脈々と光ファイバーを張ってきまして昨年末現在で5万3000キロ、
今年の数字はもう少ししたら出ますが、6万キロは超えている数字になっています。

このプロジェクトの始まりは、東京電力で情報通信に一番詳しい役員が、光ファイバーでFTTH事業がどうも事業性があるのではないかと提案したところ、ビルの引き込みとかに工事費がかかる、それなのに家一軒一軒なんて成り立つわけが無いじゃないかと猛反対に合いました。
しかしデータを集め検討していくと、まず分かった事は伝送機器が安くなった事。前はビデオデッキぐらいの大きさの機器が終端についていて一台50万ぐらいだったのが、今はメディアコンバータ対向2台で5万を切るぐらいになっている。さらに光ファイバー自体も安くなった。
さらに前は100芯のケーブルとケーブルとをつなげるのは、一芯づつ?げるので大変コストが掛かっていたが、今はちゃんとした機器が出てきて安くなってきた。
どうも、供給側の構築コストは昔ほど高くは無いということがわかってきた。
結論はある程度の需要が見込まれるのであれば成り立つのではないか。

次に問題になったのは誰がやるか。
東京電力本体でやるのか、新会社を立てるのか、TTNet、SpeedNetでやるのか?
グループ企業(TTNet,SpeedNet(無線によるアクセスラインを提供している))だけでやることも考えたが、大手プロバイダーに接続してもらわないとしょうがない。
大手プロバイダーにとってはNTTだけだと選択肢が無いし、東京電力本体がやるならいいが、ISPとして競合するTTNet、SpeedNetとしてやるなら考えさせてくれと。ネットワークとISP間で利益補填されてもいやだと。
新会社設立も、大手の企業も東電がやるなら出資しますよというのも有ったが、ものすごい投資額がかかる。資本金何百億という会社を作るとしたら作るだけで数億かかってしまうし、ブランド名を浸透させるのに時間がかかる。
そもそも、ネットワークを張るというのは電気事業と非常に近いものがあって、電柱に張っていくという電気事業のノウハウを活用したほうが良いだろうと。
われわれの得た結論はホールセールという形で、ネットワークを引いてプロバイダーにイコールの条件で開放すると言うことで、東京電力の本体事業でやることになりました。
もちろん電気事業との会計をきちんと分けるですとか、他の事業者が電柱を使いたいという場合に嫌がらせをしないとか、有線とかに東電もFTTHやっているから電柱はお断りしますよ、また遅らせる事なんて事もやらない。
案の定、総務省からも許可条件としてそういう事はやらないようにと言われましたので、
こういう事はやらないという形で参入しようと決まりました。

そこで、どこから設備が必要かというと、事業所を結ぶ芯線貸しとFTTHでは違ってきて、事業所ネットワークが配電用変電所まで光で行っています。配電用変電所というのは都内では大体2平方から3平方キロの一箇所にあり、街中に時々あれなんだみたいな施設で、まあ大体都心だと地下に在るのですが、ここまでは100パーセント構築してある。
ISPとは東京電力が持っている@Tokyoデータセンターで相互接続を行う事にしています。
配電用変電所か近傍のマンションの一室とかにお客様のネットワークを収容する集線装置を置きます。これは、500-600世帯ぐらいをカバーできるような機器を置きます。
そうすると1ポートずつお客様に割り当てられますので、集線装置とお客様の間は光が一心ずつ行く専用線みたいなものです。
さらに配電用発電所から東電事業所までは、機器で集約した2心2ルートという形で上に繋げます。
集線装置を置く拠点を分散拠点といっているのですが、街中に置き、ここから200芯ぐらいの太物ケーブルを三方向に出す。住宅地に入って96芯に小分けし、ここからさらに48芯ケーブル、さらに24芯とか、このように住宅地にメッシュ状に光を先行的に張り巡らせます。そこで、お客様が東電のFTTH入りたいとなったら先端から引いていきます。

東京23区と武蔵野市三鷹市、このエリア展開で、王子の部分を含めてだいたい5年間で650臆円のお金を積んでおります。このように大きな金額が掛かることも東京電力本体でやる事にした理由の一つです。
今年3月29日からサービスを開始し、サービス内容は100Mのベストエフォートサービスというのを考えております。
今のところ3月29日にはTTNetがプロバイダーとして載りますが、この前新聞報道であったようにSo-Netさんがまもなく接続します。他BiglobeやNiftyもまもなく接続する予定ですし、現在その他大手プロバイダーとの協議も進んでいるので増えていく予定です。
差別化のポイントとしては、
1、 料金
2、 エリア
3、 カスタマーサービス
現在は3/29の時点での確実提供エリアだが4月になったら14年度に提供するエリアの住所などを出していく。5月になりますけれども今度は23区と武蔵野市三鷹市、など15年度のいついつに開通予定ですよと全部Netにしっかり情報を出していく予定です。

後はコンテンツの部分。
これは吉本興業と一緒にブロードバンドコンテンツの開発、提供を行う新会社「キャスティ」を11月30日に設立しました。(名の由来は吉本興業と東京電力のパートナー関係を表したもので、「Content Aggregate Service by TEPCO & YOSHIMOTO」の頭文字をとったもの。)
東電のFTTHに入っていればISPを問わず共通に見れるコンテンツサービを作っていこうというものです。
内容は一つはADSLでは体感できないコンテンツ、アプリケーション、お客様側から発信するような仕掛け、仕組み、オーデションやビデオチャット等、決まっていないが光ならではの仕掛けは作って行きたいです。NTTとの差別化を図りたいため東電のFTTHに入ればこれが見れるというイベントやプロモーション的な仕掛けをやりたい。
常時出来ないのでイベント的にやっていくのかと思いますし、制作の内容として何を作りこむかは吉本興業からキャスティに人が来てもらってるんで考えてやっていってもらおうと思っている。
NTTのBROBA(エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドイニシアティブ株式会社(NTT-BB)。高速・広帯域、双方向性、常時接続の特性をもつ光ブロードバンド時代におけるコンテンツ流通の「場」の提供、すなわち企業(コンテンツホルダーやビジネスパートナー)の方々とお客様(コンシューマー)を結ぶ"マーケットプレイス"の創造を目指して、ブロードバンドコンテンツ流通に関するNTTグループの中核的子会社として本年6月29日に設立された。2002年4月1日より本格サービス開始、ものすごい人とお金をかけてやろうとしているので、どちらが特色を出せるかというところかなと思っております。

ありがとうございました。(尾上)

映像製作会社がブロードバンドコンテンツをビジネスの中心に考えた場合、従来では多くのISPと個別の回線契約が必要になるが、FTTH網への直接相互接続が可能になると、独自ASPとしても効果的なインフラが利用できるようになる。

映像制作プロダクション数社がコンテンツで協力し、ポストプロダクションに相互接続施設を持たせるだけで、東京での新設テレビ局のようなビジネスが夢ではなくなったのだ。
都内のポストプロダクションを営むオーナーは事業化へ向けて真剣にビジネスプランを検討してみてはいかがだろう。

 

2002年3月21-23日に北京国際展示場(China International Exhibition Center,Beijing)でCCBN(http://www.ccbn.com.cn)が開催された。


近年の中国はものすごい勢いで変化している。共産圏のイメージを感じさせない都市部の変貌は驚きの連続だ。
天安門スクエアーに程近いショッピングモールは、アメリカ西海岸のモールと見間違えるような大規模で洗練されたブランドショップが勢ぞろいしている。
海外ブランドの中で、中国の製造工場としての確固たる位置づけと、近い将来の大規模市場出現に向けて投資を続ける大手ブランドのマーケティング戦略に利害が一致した好例だろう。
WTO加盟を目前にして、映像とネットワークの世界は中国でどのように受け入れられているのだろうか。そんな疑問を持った筆者はCCBNの取材に出かけた。

バスとタクシーが走る流れに、自転車が縦横無尽に駆け抜けていく、中国独特の風景の先に目指す会場があった。
「アジアで最大の放送とネットワークの博覧会」と中国風に横断幕がはられている会場へ入ると、おなじみの放送機器メーカーに混じって、漢字表記のみのアドボードが新鮮に目に飛び込んでくる。

サブタイトルで「BROADBAND & DTV ASIA 2002」と銘打たれた会場は大きく4つのゾーンに分けられていた。
国際放送機器、国内放送機器、通信機器、ケーブルテレビである。

国際放送機器とはNABやInterBeeでお馴染みの放送機器メーカーが並ぶ。日本からも実績のあるSONYやPanasonic,JVCなどが大きなブースを構えていた。
もちろん多くの日本メーカーは将来を見据えてHD機器の展示を行なっている。
それでは中でも特徴的な展示を紹介しよう。

JVC(日本ビクター) D9などの高品質システムより、ネットワークカメラで、先に日本で紹介された「Streamcoder」を前面に大きく展示していた。


手探りの状態ながら、ネットワークへの展開がポイントとして捕らえられている。これは中国の高速ネットワークインフラが思いのほか早く整いつつあるからだろう。これについては機会をみて詳しく検証したいと思う。

SONY 何時もの放送機器以外に、コンセプト展示としてホームネットワークを提案していた。日本では見たことのないホームビデオサーバー(セットトップボックスとは違うTCP/IP対応型)を中心にVAIOなどのパーソナルコンピュータやエアボードなどのペリフェラルを従えて映像コンテンツのストリーミングサーバーとしての機能を強調していた。ここでも、放送電波以外に映像コンテンツをネットワークで配信するための方法を用意して提案している。

Panasonic 手堅くDVCPRO-50を前面に、そしてHDの高品質も強調した展示を行っていた。まだまだHDはフラッグシップだが、多くのDVCPRO-50をすでに導入実績がある同社では積極的な営業を上位プロダクションへ仕掛けているようだ。
ちなみに知人の勤める中国の人気ニュース番組を制作する某スタジオには、SONY Digital/BETACAM BETACAM/SX などの一体型カメラに続き同社のDVCPRO-50を数台配置されていた。その結果DVCPRO-50同士のストレート編集システム複数台の導入が決定したそうだ。

Canopus 先にNHKと共同開発を行ったエディットワークステーションの展示を精力的に行って人気を博していた。ノンリニアシステムの弱点であるキャプチャー作業を、編集の流れとして利用した方式は、先にGVGが提案していたニュース編集で大変有効な方法だ。特にメーカーのターンキーとして提案するところの安心感は大きなものがある。日本では放送機器として認知されにくい同社だが、中国市場では評価が違うようだ。

大洋 純粋の中国メーカーである同社はPINNACLE社などのボードを利用した専用ハードシステム「X-Edit」を中心にノンリニアソリューションを用意している。


専用ケースのデザインもがっちりとして安心感がある。


この編集ソフトは、各社いいとこ取りをしたような、どこかで見たような感じのする機能が満載だ。
SONYのMPEG-IMXの仕様に準拠した製品開発を契約している中国メーカーとしては、次に紹介するSOBEYと同社だけである。さらに中国語のキャラクタージェネレーターでは圧倒的なシュアを有している。

SOBEY 中国メーカーとして勢力を大洋と2分する同社は、ハード志向の大洋とは対照的にソフト重視でシステムをまとめ上げている。


SONY MPEG-IMX対応のニュースプロダクションシステムでは、サーバークライアントのハードをDELL社のパソコンで固め、ソフトで見事なネットワークコラボレーションシステムを提案していた。


それは、MPEG-2 (MPEG-IMX)と同時にMPEG-4(WindowsMedia)もサーバーに取り込み、ネットワークを通じてソフトオンリーのMPEG-4での複数同時編集システムを提案している。もちろん過去の素材や、ライブラリへのアクセスも容易だ。


つまり、放送素材としてMPEG-IMXと、ハンドリングの楽なMPEG-4を同期させて、編集が終わったMPEG-4タイムラインの情報どおりMPEG-IMXで再生(放送送出)を可能にしているのだ。このあたりは日本の放送技術者が見たら怒り出すような発想かもしれないが、コストパフォーマンスに優れ、近い将来日本でも実現可能なシステムだと思う。同社のシステムに興味のある方は弊社までお問い合わせいただきたい。

最後に残された巨大マーケットと言われる中国。そこへの売り込みに必死のメーカー各社が世界中から集まり、しのぎを削っているCCBN。

中国市場を考える上で、中国と日本の行政の違いを理解しておく必要があるだろう。
日本ではご存知のように、放送と通信は異なる役所で縄張り争いをしている。
しかし、中国は一元化された管理体制の中で、あまり隔たりのない市場と考えていたほうがよい。それよりも中央へのコネと、上位組織への導入実績が影響する市場と考えたほうがよいのだ。
共産主義では差別化を美徳としない教育をうけているので、先人と同じであることの説得力は何よりも大きい。つまり、トップの放送局の導入決定機種は、そのまま中国各地の奨励機種につながるからだ。
さらに、中国国内のネットワークは、海外とのインターネットとは違い、高速で高機能なCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)がすでに導入されている。(3月号で筆者が紹介したInktomiなど)純粋なネットワークプロバイダーではなく、CATV網を利用したFTTHが試験的に都市部を網羅しはじめている。安価なメディアコンバーターの出現などで急速に接続距離を伸ばしているのだ。

最後に、北京のインターネットカフェから弊社の動画サービスのサイトへ接続してみたが、快適なビデオを受け取ることができたことを報告しておこう。まるで隣のビルにでもいるような錯覚さえ覚えるほどの映像が大画面で飛び出してきたのには正直仰天した。日本国内よりも中国からの接続が快適ですらあることに、「恐ろしいものを見てしまった」気がしたのは、同行したスタッフの共通する感覚だった。

Copyright 1996-2007 & copy; DreamCraft