DreamCraft Staff: 2000年10月アーカイブ

 

今回はイベントをインターネットでライブ中継するケースを考えてみたい。

大規模イベントではテレビ収録用のカメラクルーがスイッチングシステムなどのフィールドプロダクションを行ってきた。そこでのWebCastソースはプログラムアウトを分岐してもらえば良かったわけだ。問題はカメラ収録までを行うWebCastの場合に従来のスイッチング収録ではコストが合わないことが多いからだ。必要な機材も、マルチソースからのスイッチャー、DVE、キャラクタージェネレーター、音声のミキサー、そしてWebCastで必要なフォーマットへのリアルタイムエンコーダーなど、多くの機材を扱うスタッフが要求されていた。

ピナクルシステムズ社が発売するストリームジェニー(STREAM GENIE)は、そんな悩みを解決してくれるライブ中継の救世主だ。

ストリームジェニーは6つのビデオインプットを持つプリスイッチャーとしての機能を持っている。さらに2系統のTBCを搭載しているので、接続機器は外部同期をかけずに、どのインプットからでも容易に3次元DVEを含め、多彩 なエフェクトを加えた2系統プロダクションスイッチャーのような画面効果を演出することが出来る。さらに別 系統のダウンストリームキーヤーと組み合わさったキャラクタージェネレーター機能も発揮できるなど、フィールドプロダクションに求められるわがままを取り揃えた便利な道具だ。

入力ソースのボタン表示も自由に書きかえられるので、状況に合わせた素材映像をわかり易くスイッチする事が出来る。例えば、一つはカメラで、一つはVTRから、そして、DVDプレーヤーとの切り換えもキーボードを使ってショートカットで迅速に切り替えることができる。実際に操作してみよう。

入力映像の素材を選択すると、それが次に表示される対象に選ばれる。

イベントでのタイミングに合わせて画面 の転換を効果的に行う事が出来るのだ。

画面の右上にあるプレビューモニターでプログラムアウトの確認をすることができる。

ソースの切り換えはカットイン、ディゾルブ、フェードイン、デジタルビデオエフェクトが自由自在に操れる。

ピナクルシステムズ社ではオンラインスタジオのスイッチャー、DVEやキャラクタージェネレーターなどの製品で定評のあるメーカーだけに映像信号の扱いには手馴れている。

ストリームジェニーの心臓部であるGENIEボードはDVEエンジンとして歴史の長いシリーズ製品だ。オリジナルのスタジオDVEとして一世を風靡した「GENIE+Plus」のインターフェースを見ても、自由な3次元エフェクトの扱いが伺える。さらにはOEMでAbid、Media100、JVCなど有名どころ各社ノンリニアシステムでオプションの3次元エフェクトエンジンとしてGENIEボードは活躍してきた。

有名なキャラクタージェネレーターであるデコ(DEKO)、の簡易版、タイトル デコがバンドルされているので、エフェクトと組み合わせて綺麗な文字タイトルを生成する事が出来る。

イベント事前に文字素材は入力をしておき、現場では画面 左下のテロップ素材を選択するだけでスーパーインポーズの準備が完了できる。次のエフェクトを事前に用意しておくことで、イベントなどの緊張する現場で確認しながら有効にタイトルをキーイングすることが出来るのだ。

さらに、すでに用意されたグラフィックスを呼び出し、プレゼンテーション用に表示することも出来るので、セミナーなどの中継も高品質に送出、収録が可能だ。

多くの操作を実際にはキーボードだけで行う事が出来るので、迅速な操作が可能だ。

重要なポイントはストリームジェニーは、このパッケージだけで収録現場から直接リアルタイムエンコードしてサーバーへアップロードする事が出来る点だ。内蔵モデムで直接送ることも、ネットワーク経由でルーターを利用してサーバーへ送ることも自由に選べる。

映像システムとエンコーダーがシームレスに接続されているので、現場で設営の手間も大幅に省ける。

WebCastで使用するフォーマットはReal Videoと、Windows Mediaを両方サポートしている。設定画面ではライブ中継用の設定や、リアルタイムにオンデマンドファイルを書出す設定が選べるようになっている。転送レートも細かく設定できるので、社内LANでの利用に高品質な映像を選択することも出来る。

しかも、デュアルCPUのモデルでは、双方のフォーマットを同時にエンコードして、別 々のストリームサーバーへアップロードする事が出来る。これで世界中のインターネットユーザーが閲覧することができるのだ。従来ならフォーマット毎のエンコーダーを別 途用意するのが当たり前だっただけに、この差は大きい。

また、編集済み映像であるプログラムアウトを通 常のNTSCビデオ出力できるので、VTRへそのまま記録したり、既存のビデオ放送システムなどへ流すことも同時に行うことが出来る。外部接続のオーディオミキサーもあり、現場へ回線を準備すれば、すぐにインターネットライブ中継を行える。

ストリームジェニーは、全てがワンボックスにおさまっているので、思いついた時にすぐに持ち運べる便利さがうれしい。その上、可愛いいキャリーケースも標準装備なので、とにかく移動が楽にできるから収録チャンスを逃がさない。

回線が無くとも、ストリームビデオのフォーマットでリアルタイムにエンコードしておけるので、収録後、すぐにサーバーへストリームデータをコピーするだけで、オンデマンドのサービスを実行可能だ。ビデオアーカイブなどのライブラリーでは、このタイプの運用が多いのではないだろうか。

出張イベント収録を小人数ですることが苦にならないパッケージに近づいてきてくれたようだ。

本体価格:\3,690,000_

 

2000年はネットワークビデオの創世期である事実を裏付けるかのように10月2日からWeb Video専門のEXPOがカリフォルニアのロングビーチで初めて開催された。ロサンゼルス郊外に位 置する海に面したロングビーチ・コンベンションセンターでは、DV EXPOとの共同開催ということもあって、多くの観客や関係者を集めて賑わった。

RealVideo:キーノートスピーチ

DV EXPOでは、デジタルカメラを中心にして、撮影を三脚に載せるだけでなく、かなり特殊な撮影機器、例えばフレームを背負って頭上からカメラを目の前に吊るすアームや、簡易クレーン等が登場している。従来までの放送スタジオ用のクレーンと違って、かなりコンパクト、簡易に使えるようになってきたのだ。カメラを移動させて撮る事に関して、色々な選択肢が広がったと言えよう。

撮影の小道具というと、ここロサンゼルスはハリウッドのすぐ横ということもあり、映画フィルム用の照明機材、レンズ前の小道具たちも紹介されていた。DV撮影に対しても有効なので、筆者も色々と展示されている逸品から、フィッシュレンズを2種類購入してきた。DVカメラで綺麗な広角を撮影できるレンズが選択肢として少ない中、大変に重宝するレンズを手に入れることができた。

さて、今回の目的であるWeb Video EXPOで注目したいのが、ポータブルのネット送出機器を始めとした、インターネットで映像を見るための道具立てがかなり充実してきた点だ。

春に行われたNAB(放送機器展)でも、アメリカの場合、放送コンテンツ映像そのものをインターネットで流すという考え方にシフトし始めてきている。

もちろん日本ではBSデジタルとハイビジョンが興味の中心だが、アメリカではHDよりも重要なのはネットワークだ、という話しを多く聞くようになってきている。

お国事情の違いとはいえ、また、日本だけのシステムスタンダードが出てきそうだ。

さて、この辺でWeb Video EXPOのキーノートスピーチから、現在の状況を探ってみたい。

画像はRealNetworks社のJeff Pancottine氏を取材した素材を使用している。

まずWebCastというのは一体どういった所から始まったのか簡単にみていこう。

ストリーミングは、ここ5年くらいの歴史しかない新しい世界で、コンピューターの静止画を見ながらネットワークから音だけが聴こえることから始まったのだ。映像の流れにしても、モデムなどの接続機器がスピードを上げるにつれてビデオの配信が始まった。最初は画面 の中の小さな映像だった。画面の大きさと画質は回線スピードに比例する。

米国ではあれよあれよという間に広帯域の回線を安価に家庭で利用できるまでになったが、日本の回線スピードは高価格のままで広帯域は庶民にはまだ縁の遠い話だ。

さらに映像そのものをネットワークで送るだけでなく、インターアクティブに色々なことをやれるように、サーバーソリューションに様々なオプションを加えてきたのだ。

例えば、野球の放送で画面の中のバックスクリーンに色々なスポンサーのロゴが入っているが、それを随時放送側の方で切り替える。これをストリーミング映像の中だけで切り替えることが可能になってきたわけだ。例えば壁に浮かんでいるピザ屋さんのロゴをクリックすると、別 のウィンドウでピザの注文画面が出てきて、「ミディアムサイズにサラミとアンチョビを乗せる」というオーダーができて、実際に宅配のピザが届く、というような連動が果 たせるわけだ。

これを支えているのがインターネットのコマースサーバー技術だ。

もう一つの流れは、HTMLといわれるホームページ上での文章の書き方、ルールが、Real Playerの中で、そのまま使えるようになってきたのだ。過去にマイクロソフトがネットスケープと競争した時、OSの中にインターネットエクスプローラーを標準装備して、コンピューターの入り口に色々な広告を仕掛ける仕組みを作ってきたが、こんどはReal Playerが、同じような路線を歩もうとしているのだ。

現在のWebブラウザーは非常に多くの情報表示というものが可能になってきた。 ホームページであればページをめくる、あるいは違うサイトに行くというリンクだが、現在ではすでに色々な映像の中で、静止画と同じようにリンクを貼れるのだ。

言葉で探す以外に映像の中からまたリンクを手繰る演出というのが可能になった。

今年の5月にReal-8が発表され、ネットワーク上での動画質をさらに向上してきた。

今のVHSの品質、言いかえれば家庭への映像納品品質といったテレビ画面 で再現されている映像とほぼ同質の映像がコンピューター画面の中で見ることができるようになってきているのだ。パソコンでDVDを再生すれば、コンピューターの画面 がNTSCテレビ画面の代用になりつつあるのが良くわかる。

画質向上の伸び率は非常に速くなってきている。ここ数年というよりは来年の早い時期にかなり綺麗な映像が簡単にコンピューターの中で再現できるようになるのではないだろうか。もちろん現時点でのビデオの映像が最終品質ではない。すぐそこにハイビジョンが目標値としてある。コンピュータ映像は、NTSCなどのテレビジョンとは違った仕組みなので、ある段階で品質がストップする訳ではなく、スペックが上がれば天井知らずに向上させていくことができる。これは家庭用のモニターでVHSを再生するという規格があるのとは違い、コンピューターでは自由に画面 の大きさ、解像度等をセットができるからだ。

アメリカの家庭でインターネットを引き込んだ私の友人の所では、お子さん3人いて、各部屋にパソコンがある。現状日本で1メガまともにNTTから引き込むと月額約百万位 かかるが、彼らは4.5メガ引き込んで月20ドルということだ。この差が何を生み出しているのか。

アメリカにおいてもインターネットのサーバー間スピードはそれ程速くはない。しかし、プロバイダ_から家庭までの回線がものすごく速くなってきている。そこで、プロバイダ_、プロバイダ_をつないだ幹線が弱い点を補う高速伝送サービス網が盛んだ。アカマイやマイクロキャストが顕著だ。既存の幹線をすっ飛ばして、プロバイダーのサーバーに対してどれだけ速く情報を送れるかをサービスしている。エッジキャッシュサーバーのような概念だ。

このようにサーバーのある所が、いわゆる地方放送局、中継局、みたいな考え方になってくるのではないか。この局からはケーブルテレビのようにインフラでスピードが1.5メガくらい配信するのが簡単だ。現状のインフラを使っても、規制さえ解除されればそれくらいのスピードはすぐに出せる。あとはコンテンツの問題だ。

先程のコンテンツプロバイダーから次のプロバイダ-のサーバーに対してデータを送るネットワークがアメリカだけではなく、どんどん世界中に拡がってきている。電波の制約を受けないインターネットは、それぞれの場所に対して同じデータを共有するエリアキャッシュサービスが民間で拡がってきているわけだ。ここで効果 的なのが実は衛星サービス。同じデータを落としていくにはシャワーの様に星から落とす方が幹線を通 すより速からだ。この代理サーバーを利用して家庭に一番近いサーバーに大容量の映像データを送り込めるわけだ。

次世代の放送番組はセットトップボックスで、欲しい、見たい映像というものをあらかじめ予約しておけば留守番ダウンロードを勝手にしておいてくれるという。それを閲覧するとペーパービューで課金再生する仕組みだ。これは、もう構造がコンピューターだ。

これからのBSやハイビジョン関係でも同じ仕組が、実はインターネットで出来る、ということになってくる。

しかもデータをインターネットで、ある時間かけてゆっくり転送しておけば、それをテレビの画面 のように綺麗に再生するのは難しいものではなくなってきている。

また、デジタルというデータは変換するということが非常に楽だ。マルチプラットフォームへの対応というものが簡単に出来る。携帯端末とか、PDA関係とか様々なモバイル端末に対して映像を送る仕組みが連動して考えられる。

実際にインターネットを利用した大規模な映像のネットワークがすでに世界中に貼られている。

従来、VHS品質といわれるテレビ品質と同じような映像データの転送レートは、初期のころではとてもディスクメディアから再生できる物ではなかった。ところが同じ品質を99年、Realの7のバージョンだと800キロくらいで実現できるようになった。今年は、4_500キロくらいの所で十分な画質がえられる。このレートは、どんどん良くなってきて、実は今の技術だと300キロくらいで実現できる。

この辺、社内のLANだとパソコン一杯の画像をコマ落ちしないように再生するというのはパソコンの能力が上がってできるようになってきた。

教育用ビデオとか社内用に運用する映像で、今までVHSで納品されてきたものに変わってビデオサーバをお客さんの社内LANに繋いであげるという時代はもうすでに来ている。

お客様の方もテレビジョンのモニターを各社員さんの前に置くというのは今後もありえない話だが、パソコンは大抵ある。パソコンの画面 に映像を呼び出すというのは社内の場合であれば現実的だ。この辺をあつかった映像関係だと、まず教育関係、学校で使われる所の教材のコンテンツという所に非常に早い時期に対応していくだろう。

Realの実装率推移だが、ものすごい勢いで伸びてきている。全米でポピュラーに利用されるソフトのアンケートと言う事だが、インターネットエクスプローラー、ワード、アウトルック、あとはアメリカンオンライン、そして次にリアルが入ってきている。

今、日本では非常に回線が高いから、小さな窓でコマ落ちの映像しかインターネットで送れない日本の現状はがあるが、ある規制が変わったとたんに状況は変わってしまう。

そうなると、いわゆるテレビ放送でチャンネルを合わせるのかコンピューターから映像を見るのか、差がなくなってきてしまうという時代がすぐそこにきている。

非常に面白い時代になったと思っている。

どんなビジネスができるんだろう、と考えていくと、かなり面 白い日本の明日が見えるのではないか。

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