ストリーミングビデオ: 2003年1月アーカイブ

 ネットワークでHD映像、5.1サラウンド音響を利用する
近づいてきたホームシアターでのハイビジョン時代?
高画質のHD映像と、包み込むようなサラウンドオーディオを配信するのは放送だけだろうか?
免許事業として新規参入が困難な放送事業、そして、比較的安価なCSなどの通信衛星を利用する委託放送事業などでも、採算を合わせることは大変なことだ。
多くの機材変更を必要とする地上波デジタル放送への移行を目の前にして、コンテンツビジネスのあり方が問われている。
高画質、高品質音響の伝達手段として、侮れなくなってきたのがネットワークを利用した配信だろう。もともとデジタルデータを扱うことは、コンピュータの守備範囲だ。
インターネットを見ても、情報の発信が距離を意識しなくなり、規模よりも内容と、サービスが重要なことは明白だ。
2003年1月29日、コンピュータ業界の巨人、マイクロソフトが「WindosMedia9日本語版」を発表した。
映像のプロに向け、コンテンツビジネスのあり方を示唆したマイルストーンとして、記念すべき日になるだろう。
いったい、この「WindosMedia9」とは、何なのだろう。
「WindosMedia9シリーズ」と言われる内容は、大きく分けて3つの基本構成で提供される。
それは、エンコーダー、サーバー、プレーヤーである。そして、それぞれの開発キットと、著作権管理機能(DRM)を加えて、デジタルメディアの世界でブレイクスルーを迎えようとしている。
それらが、いかに機能しているのかを紹介しよう。


● WindowsMedia9が可能にする世界
家庭で高品質なHDやサラウンドオーディオなどを楽しめるホームシアター。
生活に必要な購買、支払いなどの情報を管理するネットワーク。
距離を越えたクリエーターのデジタルコラボレーション。
移動中で、どこにいても情報をやり取りできるユビキタス環境。
デジタルが実現する、さまざまな機能の中で、今回の「WindosMedia9」が果たす役割を見てみよう。
まずデジタルメディアに望まれる方向を整理してみた。
メディア産業からは「見る、聴く」を実現する品質の向上。
広告業界としては「露出、履歴」からの効果測定。
クリエーターからは「作る、権利を守る」能力。
物販業種やコンテンツデベロッパーからは「配る、課金する」機能が重要な要素として上げられる。

■ 2003-1-29 DIGITAL MEDIA Day (赤坂ACTシアター)

その兆しは、今回の「WindosMedia9」発表イベントでマイクロソフトが演出した。
会場である赤坂ACTシアターの大スクリーンと、5.1チャンネルのサラウンドオーディオを再生するPAシステムに接続されていたのは、どこでも手に入るWindowsXPのパソコン(P4 2.83Ghz)だった。
Near HD品質と表現する1280×720の画角を24フレームのプログレッシブで再生する映像は、映画の品質には及ばないまでも、家庭のテレビを確実に越えていた。
既存の映画予告編を中心に、スクリーンへ表示される映像は大きな可能性を秘めていた。
多少発生していたコマ落ちや、リップシンクのずれなどは、CPUの能力が上がれば処理できることが明確なだけに、大きな世代交代のカウントダウンを感じる。

それでは、それぞれの要素を実現する、具体的な機能を見てみよう。

■ WindosMedia9エンコーダーの機能
大幅に改善されたエンコーダーの注目点は、制御機能と柔軟性だ。
クリエーターの負担がかからない無償で提供されるソフトとは思えない高機能なエンコーダーソフトで、IEEE1394からのDV映像を取り込む際のデバイスコントロールが標準装備となった。
デバイス制御が可能になったことと合わせてマルチパスのエンコードも可能になった。
DVDなどのMPEG-2ではおなじみの、可変ビットレート(VBR)の対応でさらに高圧縮で高品質が可能になった。
権利保護のためにマイクロソフトDRM(デジタル著作権管理)を使用してリアルタイムに暗号化処理が行える。
サーバーの機能強化に合わせて、従来プルのみだった配信に、プッシュ処理が可能になった。
さらにリモート監視機能でサーバーサイドの配信統計情報を随時入手ができるようになった。
複数のオーディオファイルを利用してリアルタイムでマルチチャンネルのオーディオコンテンツが作成できる。
ロスレス(可逆圧縮)を採用したオーディオでは計算上損失のないCD品質オーディオが扱える。
ライブイベントなどで送出ソースを、ライブ入力と記録済みファイルと切り替えられるため、多彩な演出が可能になった。
さらに、プラグインで、機能拡大も可能で、エンコード時の特殊効果も行えるようになった。
また、機能豊富なユーティリティで細かなファイル操作を実現したり、SDKにより制御システムの開発、自動化なども行えるようになった。
コマンドラインからもコントロールできるエンコーダーは、さらなる機能拡張に柔軟な対応を見せてくれるだろう。

 

■ WindosMedia9サーバーの機能
Windows2003で実装される新しいWindowsMediaServerは、多くの改善が見られた。
特に目立つ点は、即座に再生を開始する「ファストストリーミング」機能だ。
これは、従来のストリーミング配信で付きものだった再生が開始されるまでのバッファ時間をなくして、瞬間的に再生を開始するものだ。
テレビチャンネルを切り替える感覚でコンテンツのザッピングすることも夢ではない。
また、回線帯域に余裕があれば、再生時間軸に関係なく早めにデータをプレーヤーにキャッシュさせることで、ネットワークトラブルによる再生中断を最小化できる。
実際にネットワークケーブルを途中で抜いても、再生を継続するし、また接続すれば再生にブランク無く継続することができた。
次に、サーバーサイドでのプレイリスト編成による広告の挿入も行うことが可能になった。従来複雑だったユーザーごとに広告を変えた配信を実行するなどのカスタマイズも可能になった。
動的にプレイリストを編集しながら配信を止める事なく運用できる。
従来のサーバーの配信能力を2倍に向上させただけでなく、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)への対応も可能になった。
SDKの開放によってキャッシュサーバーやプロキシーサーバーとしても構築が可能。
充実した管理ツールと、プラグインによる拡張でプラットフォームで稼動するストレージ、課金、ロギングのシステムとシームレスに統合できる。

 

■ WindosMedia9プレーヤーの機能
単なるメディアファイル再生ソフトではなく、デジタルメディアマネージメントのベースになる成長を遂げた。開放されたスキンのカスタマイズによる多様な差別化が行える。
新しいサーバーとの組み合わせでバッファリングを過去のものにした配信を受けられる。
ローカルディスクに存在するメディアファイルのみならずネットワーク上にある好みのコンテンツへ快適につなぐことができる。メディア管理が大変に楽になった。
多彩なスキンデザインと、カスタマイズを提供するSDKによって、コンテンツプロバイダーによって独自の再生環境を構築できる。htmlのWeb画面やFlashのアニメーション表示もプレーヤーだけで対応するので、Webブラウザー抜きでもコンテンツを表示できる。
Infoセンター表示でDVD再生時にカバー情報、チャプタ情報、レビューなどの多彩な情報が表示される。
TVチャンネル感覚のすばやい切り替えに反応し、再生リスト間のクロスフェード機能で自動的に音量を調整してくれる。
オーディオCDの作成では、自動ボリューム調整機能によって、再生リスト内の全トラックが均一に調整される。CD-Rで作成されたディスクは、WindowsMediaに対応したDVDプレーヤー、カーステレオ、ポータブルCDプレーヤーで再生することができる。
このように家電機器との接続を大きく進めたことも注目に値する。

 

● 多様なビジネスモデル
プロが意識する品質向上により利用する方法が現実的になってきた


発表会にゲスト出演した「千と千尋の神隠し」など映画音楽で著名な久石 譲さんは、
「ここまでくるのは大変なことだな!」と賞する。
先日テレビ放送で高視聴率を収めた「千と千尋の神隠し」はステレオ放送だったが、自身の監督作品である「カルテット」を5.1chサラウンドで紹介しながら、映画監督2作品目になる「第4楽章」を2月6日からブロードバンド上映を試みるなど、意欲を示している。

マイクロソフト株式会社では、国内の音楽、映像コンテンツサービス提供会社4社と協力して会員制の課金コンテンツサービス「Windows Media 9 シリーズ プレミアムサービス」を開始する。
放送事業者が試みるビジネスモデルとして、「株式会社WOWOW」が提案する「WOWOW Genetics」では、エンターテイメントコンテンツをストリーミング配信する。
「株式会社スカイパーフェク・コミュニケーション」では「スカパー!BB」として放送コンテンツの有効利用を目指している。
音楽業界が試みるビジネスモデルとしては、「エイベックスグループ」が、アーティストのビデオクリップを2Mbpsの高品質映像で配信する「PRISMIX TV」をスタートする。
「ゆうせん」では、旬モノからン懐かしのテレビ番組、オリジナル秘蔵映像など「ShowTime」で提供する。
「プレミアムサービス」では、WindowsMediaプレーヤーを起動するだけで、「プレミアムサービス」タグから、各社が提供する音楽、映像のコンテンツの視聴から購入まで一連のサービスを受けることができる。コンテンツサービス提供会社は「プレミアムサービス」と連携することで、従来の会員に加えて、ブロードバンドを活用した新しい会員獲得を目指すことが可能だ。


● 家電との関わり方
高精細HDと5.1chサラウンドは、ブロードバンドだけでなく、メモリー媒体や、CD、DVDなどのディスクメディアの容量節約に大きな意味を持っている。
200以上のデバイスが賛同するWindowsMediaAudio対応の携帯オーディオプレーヤーがよい例だ。
DVDディスクにWMAのファイルで登録すれば3000時間にも及ぶアーカイブが可能だ。
さらに、映像を含めた新規格「HIGHMAT」対応の機器にも大きな可能性を示している。
Panasonic、FujiFilm、SONIC、Pinnacle、JVC、AHEAD、BHA、ECI、APEXなどが賛同している。
DVDの再生だけでなく、パソコンで作成したディスクから、オーディオ、静止画、ビデオを、一般のテレビジョンで再生可能にする規格として今後が楽しみだ。
ホームシアター、ポータブルDVDプレーヤーやカーコンポなどでの利用が提案されている。
映像商品の納品形態がますます増えてくることを意味するのだ。

 

「WindosMedia9」は、大きく進歩したコーデックによって、さらに高品質、高圧縮を可能にした。エンコーダー、サーバー、プレーヤー、そして、それぞれの開発キットと、著作権管理機能を加えて、デジタルメディアの世界でブレイクスルーを迎えようとしている。
この方向性が、従来の「小さな画面でぎこちない再生」が、いよいよ「大画面でスムーズな再生」へ近づいてきたのだ。
アナログ時代のテレビジョンは、テレビ誕生の50年前から現在まで「放送規格」である512本の走査線、毎分約30枚のフレームという共通のルールによってハードウェアが普及し、逆に変化を制限され互換性を保ってきた。これはデジタルハイビジョンにしても同様だ。
一方、コンピュータを中心にデジタル映像は画面の密度(走査線というより解像度)や、毎分のコマ数を自由に変更することが、システムとして許容されている。
時間の問題で、テレビ品質はパソコン映像の品質に抜かれることになるだろう。

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