デスクトップビデオ: 1998年6月アーカイブ

 

1998-06-20

 

尾上 泰夫 


NAB98でデビューしたPinnacle Systems社(以下ピナクル社という)の新製品「Reel Time」の最大の特徴は、WindowsNT上でAdobe社のPremiereを利用しながらレンダリング不要のリアルタイム再生が行なえることだ。

従来のノンリニアビデオ編集では多かれ少なかれレンダリング時間を待たされるが、「Reel Time」ではスクラブ(マウスで指定した場面を時間軸でなぞる)状態でもアルファー合成やワイプなどエフェクトのかかり具合がその場で確認できる。これはすごい。

ピナクル社はD1静止画ファイル装置LIGHTNINGや3D DVEのDVEXtreme、キャラクタージェネレーターのTypeDeKOなどスタジオシステムではお馴染みのメーカーである。

今回、筆者が導入した「Reel Time」のバージョンは1.02である。1.01でも、すぐに代理店で1.02に無償アップグレードしてもらえる。それでは「Reel Time」の導入をレポートを、ポピュラーなMedia100xrとの比較を交えてお届けしよう。

製品価格は3倍以上違う両者だが、後発の「Reel Time」が予想以上のコストパフォーマンスを示してくれた。

 

購入した「Reel Time」は綺麗に日本語表記も備えパッケージされている。さらに親切にインストールガイドのビデオ(英語版)も同梱されている。メーカーの意気込みが感じられるところだ。

現在は英語版のマニュアルを見ながらのインストールだが早急に日本語版を用意してほしいものだ。


「パソコン環境の準備」

はじめにパソコンのインストール環境を整えておこう。どんなシステムで快適に動くのかは以下をご参照いただきたい。

 

 

250W以上の電源と強力な冷却ファンを備え、

フルサイズPCIカードが入る筐体を用意しよう。

筆者は300Wのラックマウントタイプで構築した。

使用するCPUはPentiumII 266MHz以上。

筆者は333MHzを使用した。

必要なメモリーは128MB以上だが、余裕を考え192MB搭載した。

OSはWindowsNT4.0Workstationに ServicePack3を導入しておく。

くれぐれもNT Serverは利用しないように。

バックグランドで動作するサービスはビデオ編集には悪影響をおよぼすのでネットワーク関連のサーバー機能などはできる限り停止しておこう。「Reel Time」は1枚でデュアルコーデックを実現しているのでPCIスロットは節約できる。DV/1394やSDI入出力はドータボードを本体ボードへ増設して機能追加されるオプション構成だ。

9月にオプションで発売される3Dエフェクトボード「Genie-RT」は、ピクチャーインピクチャー、ページターン、リップルなどの3DDVEがリアルタイムに可能になる。ぜひPCIスロットを1つ空けておこう。

マザーボードのPCIスロットは4~5が標準構成になるので節約のために、ビデオカードはAGP ポートを活用しよう。SVGAビデオカードでメモリー4MB は必要だ。1152×862を32ビットで表示させたい。

 

重要なのはUltra Wide SCSI-3カードと、7200RPM~10000RPMのUltra Wide SCSI-3ハードディスクだ。

メーカー推奨では4GBのシステム用ディスクパテーションとストライプ設定された4GB以上のUltra Wide SCSI-3ディスクが4個に、デュアルチャンネル対応Ultra Wide SCSI-3カードが必要だ。これはチップセットなどの組み合わせ方でもパフォーマンスは大きく変わるのでマザーボードとの相性は確認が必要だ。

OSであるNTのストライプセットによるソフトレイドの性能も上がってきているが、ビデオキャプチャーなどを同時に行うのでCPUの負担を少しでもかるくするために今回はレイドアダプターのAAA-133カードによる3chハードレイドで構築した。

ハードディスクはビデオキャプチャーにメジャーでは無いが、発熱が少なく高速の、IBM DDRS39130を使用した。

理論的には1chで15のIDを利用できるUltra Wideの構成だ。3台のハードディスクなど1chで構成できるが、以前の実験で期待したようなパフォーマンスを発揮できなかったので3chに振り分けて試してみることにする。特に今回は13MB/secのLossless?設定で高品質画像を利用するため負荷の分散を試みた。

ハードディスク総容量は製作する作品の尺にもよるが、筆者は3GB×3個の構成で27GBの環境を用意した。ビデオではコマ落ちしないことが最低条件なので少しでも余裕を持った構成にしたい。

以上のように部品で購入すれば自分の必要な環境を最小限のコストで構築できるが、レイドなどの部品選択や、BIOSの設定などコンピュータに詳しくないと、手にあまる場合が予想される。高価な部品を無駄にしないために、自信の無い方はターンキーシステムで組み立て済みのセットをお勧めする。


「インストール」

「Reel Time」の導入環境が整ったので早速インストールを開始する。

パッケージの中にはAdobe Premiere4.2のCD-ROMと「Reel Time」のCD-ROMが2枚ある。

マニュアルは「Reel Time」とPremiereが製品版として英語版が同梱されている。

他にはデバイスコントロール・プラグイン・ソフトとしてPipeLine Digital社のProVTRがフロッピーがある。これは「Reel Time」のCD-ROMをインストールすれば標準でインストールされるので保管しておく。

初めにPremiereからインストールする。

このCD-ROMにはフルバージョンのPremiereの他に画像編集では有名なAdobe PhotoShop LE(ライトバージョン)と、フライングロゴなどを製作するCrystal Fling Fonts LE(ライトバージョン)など、ビデオ制作に便利な道具が数多く含まれている。

Premiere4.2は英語版だが9月には日本語版5.0へのフリーアップデートが予定されている。Premiereは多くのノンリニアシステムにバンドルされているが、5.0上でのリアルタイム再生サポートとしてはピナクル社「Reel Time」が業界初になる。

続いて「Reel Time」のCD-ROMからキャプチャーコントロールソフトや、Premiereのカスタムプラグインなどのインストールを自動で行えばソフト関係は終了だ。


「各種設定」

「Reel Time」のインストールされたPremiereを起動してみよう。お馴染みのスタートアップ画面の途中で「Reel Time」のクレジット画面が登場する。

 

 

スクリーンバッファの初期化を行っていることがNTSCモニターでよくわかる。

しばらくするとPremiereのプリセット設定画面が現れる。

 

 

「ReelTime NTSC」を選択して新規プロジェクトを開くとPremiereの編集画面となる。

汎用のPremiereとの違いは唯一以下の「Reel Time」メニューの追加だけである。これ以外はまったく標準のPremiereと変わりは無い。

 

 

「ReelTimeR Play」はリアルタイムの再生を行うコマンドである。このコマンドでタイムライン上のクリップはレンダリングなしで、すぐに再生を始める。

「ReelTimeR Option...」は「Reel Time」の機能設定を行う。以下が入力信号の設定と出力信号の設定画面だ。

 

 

オプションで用意されるDV/1394やSDIのドーターボードを加えると、ここにメニューが追加される。

筆者の設定は入力をベーターカムSPのアナログコンポーネントから映像を受け取り、音声をキャノンのバランス入力から受け取る。作業用のプレビューアウトをS端子でモニターで確認することにする。

Syncは外部との同期を必要としないのでINT (Free Run)で単独実行させる。出力調整用のカラーバー出力もここから設定できる。

 

 

「Reel Time」は基本的にオンライン編集を目的に使用できる画質を持っている。

その品質を決定するのが圧縮のレートだ。

最近はやりのminiDVは収録段階で、すでに5:1の圧縮を受けている。毎秒4MBに相当する品質に当たるが、せっかくのCG等の合成や、既存のベーターカムSPの素材を、その低い画質にそろえるのも忍びない。

今回はMedia100との比較を考えて300KByte/Frameに相当する9MB/sと、実験のため13MB/sを試してみた。

結果的には、最終コピーのジェネレーションダウンを考慮して、持ち込める素材の画質より1~2段階程度高い品質にしておくのが良好なようだ。

 

無闇に高い品質にセットしても素材の状態よりは品質の向上はあり得ないのだから、貴重なディスクスペースの無駄になるので注意したい。

 

 

コンピュータを利用したシステムの便利なところにNTSCとPALの作品を簡単に出力できる点があげられる。また、システムのセットアップレベルに合わせて7.5 IREと0 IREを簡単に切り替えられる。

 

 

今回インストールされた各モジュールのバージョンは以上のとおり。これまで、かなり早いテンポでバージョンアップを続けているので、まめにチェックしていきたい。


 

「キャプチャー」

実際に作業を行ってみよう。

ノンリニア編集の最初の作業は、カメラなどで収録した映像のキャプチャーと呼ばれるデジタイズ作業だ。ノンリニアシステムで本当に美味しい思いをしたければ、今まで以上に収録時の有効なタイムコードの管理を行うべきだ。ビデオテープという安価なメディアに対してハードディスクのメディアコストは桁外れに高価で持ち運びに不便だ。作業の効率化や再現性を考えるとタイムコードによるバッジ処理が重要な用件となってくる。

タイムコードによる外部デバイスのコントロール機能をノンリニアシステムに提供しているのはプラグインソフトだ。

Macintosh9600/300上で稼動するMedia100xrもWindowsNT上で稼動する「Reel Time」もPipeLine社の製品で実現していた。

筆者の使用するVTRはSONY UVW-1800のベータカムSPレコーダーである。

9PシリアルのRS422インターフェースを有しているこのVTRから「Reel Time」とMedia100xrでキャプチャー操作を行った。

 

 

キャプチャー操作で必要なのは迅速なVTRコントロールと、タイムコードによるテープアドレスの再現だろう。

再生、停止はキーボードでスペースバーを押すだけで両者とも可能だ。イン、アウトのマークもファンクションキーに割り振られている。

セットしたアドレスへ移動するキューアップも両者とも可能だ。細かな話だが、数値入力はMedia100の方がやりやすい。

VTR操作に対する感触は、両者とも同じようにキビキビ反応する。操作性については、慣れによる好みが評価に大きな割り合いをしめるので、今回は機能の違いだけを見ることにしよう。

 

大きな違いは、指定したアドレスを記録してキャプチャーを後でまとめて行うための設定が、Media100ではBinに直接メディアファイルのないクリップとして記録されるのに対して、PremiereはBatch Captureのファイルとして別に保存することだ。

 

 

両者の考え方の違いは、再度キャプチャーを行う理由を想定しているところが異なるためだ。

Media100では、1度低い解像度ですべての素材を取り込み、編集を終えた後に、再度使用されているカットだけを高品質に取り込みなおすことを可能にしている。そのためにメディアファイルを分割してタイムラインで使用されていないところを削除する機能などが用意されている。オフライン編集が終わったデータでオンライン編集の品質に持ち上げるといったビデオ編集専用に考えられているソフトらしい所だ。

対してPremiere4.2は、メディアファイルを操作することはしない。何度でもBatch Captureのファイルに記述されたとおりに取込み作業を行う。この考え方はは5.0でも同じだろう。

素材テープを全部ディスクにキャプチャーしてから編集する方法と、必要なOKカットだけ厳密にをキャプチャーして編集する方法とに作業が別れる。

経験的には素材全部を一気に取り込むとカットクリップを探すムダが多いので、自然に正確なOK出しを行いカット分のクリップを用意するようになる。

大容量の高速ハードディスクがしだいに安価になってきているので、2度取り込む作業を行うより、初めからオンライン品質で、Batch Captureファイルを作ってクリップする作業した方が効率的かもしれない。

Premiere4.2である現在、ファイルサイズが2Gバイトを超えられない問題は、Premiere5.0となる次のバージョンアップで解決すると報じられているので楽しみである。

素材の取込みにおいては、ビデオ映像以外にもコンピュータで作成したグラフィックなども大切な要素だ。「Reel Time」は汎用ソフトの強みを生かして、同じAdobe社のグラフィック関連ソフトではPhotoshopやIllustrator。動画の多重合成では映画でも利用される程の高機能のAfter Effectsなど高度な互換性の環境が期待できる。

アルファーキーの利用も簡単だし、大袈裟なフォーマット変換なしで読み込める手軽さは同じメーカーならではのメリットだろう。しかも画面のインターフェースがPremiere5.0になるとレイヤー管理の概念が高度に統一されるのでソフトを行き来しての製作に戸惑うこともなくなるだろう。


「編集操作」

「Reel Time」の最大の特徴はレンダリング不要のリアルタイムオンライン再生である。

タイムライン上のA、B素材はデュアルコーデックによって同時に再生を行なえる。

同時にEffect-O-Maticと呼ばれる130種類に及ぶ「Reel Time」専用のトランジェションエフェクトと、スーパーのルミナンスキーや、アルファーキー合成をタイムラインに並べるだけで軽々とリアルタイム再生が行なえるのである。

ノンリニア編集で、画質を心配する必要は、この「Reel Time」ではほとんど無い。ベーターカムSPで納品できる仕事なら躊躇なくオンラインのコピーでフィニッシュである。

 

 

オーディオトラックは12トラックまで同時にミックスできるのを確認した。

おおよそ通常のビデオ編集で必要な作業はMAを含めてリアルタイムだ。しかもスクラブでもフレーム送りでも、バックですら合成の効果を確認できるのには驚きである。

「Reel Time」の編集作業にプレビューという概念はない。すぐに本番の実行ができるのだから当然とも言えるが、テープ落としも即座にビデオ録画が可能だ。

企業、教育、医療、マルチメディアコンテンツ、CS、CATV放送等を含むブロードキャスト等、費用対効果の問われる製作が多い現在では、割り切った編集を短時間で行うのに「Reel Time」は最適と言える。

現在のバージョンでは従来のエフェクトや、バーチャルクリップがリアルタイムでは利用できないので、予め別のクリップファイルとして保存し、再度インポートしておく必要がある。

BorisFXなどサードパーティーのビデオエフェクトや、Photoshopのプラグインを利用したエフェクトもリアルタイムの恩恵を受けることはできない。

タイムコードを設定した形でのテーププリントも現在はできないのが残念だ。

 

 

Premiere5.0による編集操作の改善はインサート編集のクリップを割り込ませる場合の処理を、押し出しやオーバーライドをボタン一つで切り替えられる。さらにオーディオの波形編集など、専用ソフトを凌ぐ面をみせている。登場したら本誌で専用ソフトと操作性の比較を行いたいと思う。今から日本語版5.0へのフリーアップデートが楽しみである。

 

 

割り切った機能向上で現実的なビデオ編集作業に高いコストパフォーマンスを見せる「Reel Time」であるが、デビュー初期段階の未完成部分も感じられる。

しかし、Adobe社のノンリニアビデオ編集分野への熱心な姿勢や、「Reel Time」への並々ならぬ期待は新バージョンのピナクル社との共同開発にも現れている。

インターネットで見られるピナクル社の「Reel Time」サポートの内容でも多くの開発予定が提示されている。詳しくは以下のアドレスを参照いただきたい。

 

http://pinnaclesys.com/Reeltime/Support/SWstatus.html

 

現在、不満に感じる部分は、ほとんど把握しているようだ。ピナクル社の放送システムに対する経験から、その部分も早急に解決していくことを期待したい。

 

「Reel Time」の販売形態はSONY、COMPAQ、Adobe、Pinnacle Systemsの4社で世界規模の共同体制を発表している。海外ではトレーニングなどの共同開催も盛んに予定されているが、日本では残念ながら代理店個別にまかされている段階だ。日本のユーザーに対して早急なローカライズと組織的なバックアップを期待したいところだ。

導入する場合、パソコンに詳しい方が少ないなら、ターンキーシステムなど必要な器材を組み込んであるセットアップ済みの「Reel Time」が選択のポイントになるだろう。システムを提案する会社の得意分野と、購入する目的が一致するように、問い合わせと試用を念入りに行ってほしい。

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