2003年4月アーカイブ

 

イラクが戦火とSARS感染危機の中で、空路を心配する向きが多かったためか、日本人を殆ど見かけないNAB2003会場だ。去年まではラスベガスヒルトンのコンベンション会場(LVCC)とサンズ・コンベンションホールに分かれていたが、今年からはLVCCだけの開催となった。これは、、展示面積が縮小したのではなく、去年から工事を進めていたLVCCの機能拡張が利用されだしたためだ。
まるで、幕張メッセを3個合わせたような規模の展示スペースには、通信用のアンテナから、中継車、撮影機器、スタジオ機器、編集システム、放送管理システム、など、さまざまな分野の展示がぎっしりと用意されている。

セミナーの内容も充実しているので、時間のたつことがとても早い。
例によって筆者の趣味で選択してレポートをお送りしよう。

SONYでは青紫色レーザーを用いた放送業務用光ディスク・システムを発表した。


光ディスク・システムは、青紫色レーザーを用いてケースに入った直径12cmの光ディスクに23GB(DV圧縮方式で90分・MPEG IMX圧縮方式で45分)の映像を記録・再生可能な放送業務用ビデオ・システムだ。高転送レートでの高解像度映像の記録再生に加え、同時記録されるプロキシAV(低解像度映像)など各種メタデータ(日時・場所・メモなどの付帯情報)の活用で、制作時間を大幅に短縮。ディスクならではの特長を活かした、次世代の制作システムを構築できる。また、同時発表の"XPRI version6.0"も対応しており、ネットワークを活かした高速で快適な制作環境を実現した。
耐塵、耐衝撃性に考慮したディスクカートリッジの中には2オプティカルヘッドへ対応した最大144Mbpsの転送レートをもつ23.3GBディスクが収められている。
気になる記録時間は、DVCAMで90分、MPEG IMXでは45分となっている。
書き換えサイクルはENG利用を意識して1000回以上、推定保存期間は30年以上とされている。

 

現場で発表されていた価格にもSONYの普及に掛ける強い意志が感じられる。
PDW-510 カムコーダー ($19,900) :DVCAM記録、内蔵LCDモニターで簡易編集
PDW-530 カムコーダー ($34,000) :MPEG IMX記録/DVCAM記録切換、同上
PDW-V1 モバイルデッキ ($7,000) :A4サイズ、LCDモニター内蔵、DC駆動可、i-LINK対応、 100Base-TXによる高速転送
PDW-1500 コンパクトデッキ ($15,000) :1/2ラック幅、2ヘッド、i-LINK対応、GbEネットによる高速転送
PDW-3000 スタジオデッキ ($26,000): フルラック幅、2ヘッド、GbEネットによる高速転送、i-LINK対応
※ 上記の価格はすべて、北米市場向けの価格。

 

ディスクに記録することによって素材映像へのアクセススピードがテープメディアと違って飛躍的に向上するだけでなく、ハードディスクと比べて安価なメディアで、保管にも便利な点は重要だ。

今回の発表で筆者が興味を持っているのはプロキシA/V(栄解像度画像・音声)の再生も装備されている点だ。IPネットワークに接続したディスクプレーヤーからは最大20~30倍のデータ転送が可能で、撮影素材のデータベース化に大きな可能性を感じる。メタデータとの組み合わせで、多彩なシステム展開が期待できる。弊社(FTT)でも開発に対して検討を進めている。

大手ネットワーク局での採用
既存のシステムを活かしながら、運用の効率化・コストの低減・コンテンツの再利用などを効率的に実現する光ディスク・システムは、各国の大手ネットワーク局での採用が決定している。

●CNN -Cable News Network(全米のケーブルテレビ放送ネットワーク):
より早く効率的・低コストな報道制作システムとして、今秋からテスト導入を開始。
●NBC -National Broadcasting Company(全米の4大放送ネットワークのひとつ):   
収録映像をすばやく確認・編集・再生できるディスクの利点を活かして、2004年のアテネ オリンピックでも採用することを決定。
●DBG -Dispatch Broadcast Group(米国の放送局ネットワーク):  
傘下の放送局WBNS-TV、WTHR-TV、Ohio News Networkに導入予定。
●WDR(ドイツの放送局ネットワーク):
カムコーダー100式以上とラインアップ機器を組合せ、今年10月に導入予定。
●BR(ドイツの放送局ネットワーク):
デジタル化とファイルベースの制作環境に移行するために、光ディスクの技術に賛同し、カムコーダーの採用を計画している。
●Seven Network -(オーストラリアの放送局ネットワーク):
光ディスクの利点を活かしたシステム構築を目指して、順次システムを導入予定。

~ アビッド、ピナクル、クォンテルのノンリニア制作システムにも対応 ~
ノンリニア制作システム各社との協業によりアビッド、ピナクル、クォンテル各社から光ディスク・システム対応のノンリニア制作システム公開した。
●アビッド・テクノロジー社(ブース#SL300)の対応製品:
UnityTM、NewsCutter(R)、Media Composer(R)、Avid Xpress(R)、 SymphonyTM
●ピナクル社(ブース#SU5003)の対応製品:
Vortex news systems、Liquid blue non-linear editing systems
●クォンテル社(ブース#C2612)の対応製品:
Qcut near-instantaneous non-linear editing(予定)


非圧縮HDのIP伝送(NTT i-Visto)


NTTが発表したのは、インターネット・ビデオ・スタジオ・システム(i-Visto)と名づけたHD非圧縮映像のIPネットワークリアルタイム伝送技術だ。従来のSDI信号でのスタジオルーティング方式ではなく、IPネットワークだけでスタジオ内の映像配信を可能にする画期的なコンセプトだ。IPでの双方向通信のメリットを生かしてカメラコントロールや、ゲートウェーを介してVTR制御を行うなど、簡単にシステムが拡張できる。


まるでパソコンのケースにテレビカメラのレンズが突き出したような装置(i-Visto HDTV Camera)、池上製のカメラユニットへ独自のIPゲートウェイユニットを搭載している。1.5Gpsの帯域をリアルタイムで非圧縮のHD信号をIPネットワーク上を伝送することが出来る。
IPネットワークを用意するだけでカメラコントロールなどと、非圧縮HD信号の双方向通信が可能になるのだ。


サーバーとなるビデオサーバー(i-Visto media server)はコンテンツ管理を受け持ち、クライアントの要請で同様の非圧縮HD信号をIPネットワークで配信できる。NTTオリジナルの広帯域スイッチ(i-Visto switch)を介して分配し、NTTオリジナルゲートウェイ(i-Visto gateway)から通常のHD-SDI信号へもどされ、VTRや、モニターへ渡される。


受け取るレコーダーもIPアドレスを持つことで、多彩な経路設定が容易に行うことが出来る。
HDの非圧縮素材を管理する現場で、ルーティングスイッチに悩む必要がなくなるのかもしれない。いくら距離を伸ばしても減衰せず設置可能なHD非圧縮伝送路は貴重な存在だ。
確かに放送局舎の配線が変わってしまうかもしれない。

MPEG-4 HDリアルタイムエンコーダー


エンドユーザーまでHD映像の高品質をネットワークで届けるために効果的な圧縮も提供されている。


EnvivioからはエンドユーザーへのHD配信に適した高圧縮でありながら高品質なMPEG-4のHDリアルタイムエンコーダーを発表した。HD品質を720Pで4Mbps、1080Pでも6Mbpsで配信できるため、施設などの映像展示システムには重宝するだろう。ライセンスの気になる向きにはH264もすでに実用段階に入ってさかんにデモを行っていた。

HD映像と、ネットワーク利用にフォーカスしたレポートとなったが、現時点の日本での需要が世界でもトップで、日本メーカーの活躍に今後も期待したい。

ブロードバンドが騒がれる以前から、多くの自治体や企業内ネットワークで利用されているビデオサーバーがある。
InfoValue社の提供する『 QuickVideo 』ストリーミングソフトウェアは、金融情勢ニュース配信大手『 BloombregファイナンシャルTV 』をはじめ数々の大手企業に導入実績のある国際標準規格MPEGの全てに対応した動画配信ソフトウェアだ。
従来からMPEGを利用するオープンシステムのサーバーとして定評のあるソリューションだが、圧縮技術の進歩と、回線大域の拡大がイントラ市場から、ブロードバンド市場へと守備範囲を拡大している。


簡単にラインナップを紹介しよう。

【ビデオ・オンデマンド】QuickVideo OnDemand

【ビデオ・ライブ・マルチキャスト】QuickVideo Multicast

【コンテンツデリバリ】QuickVideo Distributed Cashe

【ビデオアーカイブ管理】QuickVideo Archive with ClipCreator

【ビデオプレイヤー】QuickVideo Embedded Player

ビデオ配信について必要なソリューションがシームレスに用意されている。
この各ソリューションについては順次機会があれば紹介したいと思う。
今回はビデオ記録環境を提供する【ビデオ・オンデマンド】QuickVideo OnDemandを使用してみよう。
再生には【ビデオプレイヤー】QuickVideo Embedded Playerを利用する。

スループット性能はシングルCPUですら950Mbps以上を可能にするので、事実上ギガイーサネットを全開でサポート可能だ。
拡張性でもCDNなどのキャッシュサーバーが用意されているので、大規模な映像配信も可能にするスケーラビリティを提供している。

サーバーソフトのインストールは、インストーラーのダブルクリックで簡単に終了する。
ライセンスは実機に合わせてそのつど発行される。
重要なのはビデオ素材を蓄積するディレクトリをサーバーソフトに設定するのではなく、OSで共有設定をすることで定義していることだ。必要なディレクトリを共有しよう。
ビデオサーバーによっては性能にこだわるばかりに、専用のフォーマットでデバイスを占領してしまうこともあるので、OSで利用できるフォーマットの中でビデオファイルの管理できるオープンな環境は歓迎される。

さっそくMPEG素材を用意しよう。

従来のビデオサーバーの常識では、ストリーミングに使用するMPEG素材としてTS(トランスファー・ストリーム)を必要としてきたが、QuickVideoの便利なところはTSだけでなく、PS(プログラム・ストリーム)の素材も利用できるところだ。
つまり、DVDなどで使用するフォーマットのMPEG2から簡単に素材が準備できるのだ。
QuickVideoの便利さを思い知るのはこれからだ。
なんと、記録として保存してあるDVDを元に、さらにDivXなどで圧縮した素材を利用することもできるのだ。
DivXはフリーで利用できる高品質圧縮コーデック(MPEG-4に近い)としてDVDのリッピングなどで「ダーティー」なイメージが先行しているが、それは利用者の問題で、高機能なコーデックとして評価に値する。
DivXを利用することでネットワーク配信に適切な2~3Mbpsの帯域で、MPEG-2では5~7Mbpsでないと不可能だった高品質な映像を利用することが可能になったのだ。

素材が置かれたらクライアントマシンから呼び出してみよう。
再生で利用する【ビデオプレイヤー】QuickVideo Embedded Playerは、文字通りWebブラウザーの中でオブジェクトとして埋め込まれて利用するようになっている。
DivXを使用する場合はクライアントマシンにも、あらかじめDivXコーデックをインストールしておこう。

簡単なhtmlファイルをテキストエディターで加工すれば実験用の呼び出しファイルは完成する。
このあたりはWMVやRealのエンベッドを利用できる方なら簡単に作成できる範囲だ。

サーバーのIPアドレスと、素材を置いてあるディレクトリのパスを加えて呼び出せば、あっけなく映像が表示される。パラメータで最初にフル画面表示にするか、埋め込み表示にするかを事前に決めておくことが出来る。もちろんいつでも好きなときに画面サイズは変えることが出来る。

ここで比較したいのはローカル環境で再生するDVDコンテンツの映像だ。
恐ろしいことにネットワークを介して送られてくる映像が、フルスクリーンでスムースに再生され、ローカルのコンテンツと殆ど差がない点だ。社内や、学内での利用なら十分にビデオ放送の変わりに利用することが出来る。
2Mbpsほどの帯域ならブロードバンドでも可能な世界だ。

実際に台湾の国会中継や、ロッキードマーチン社の米国空軍での利用事例などでも、フルスクリーンでの画質と、オープンシステムが高く評価されての導入と考えられる。

今回の試用は、InfoValue社の提供する『 QuickVideo 』ストリーミングソフトウェアを利用したソリューションとして、弊社が開発するメタデータ自動登録システム(i-Topic)の映像部分を大画面で運用するために評価した。
同時にWindowsMediaServerと共存させ、PDAなどの手のひらで持ち歩けるワイヤレス・ユビキタス・ソリューションと、LANでのフルスクリーン再生可能なシステムを組み合わせたオープンなシステムが構築でき、拡張性には非常にありがたかった。
特にフレーム単位で動画のアドレスを指定して再生する機能は、プロダクトによってかなり面倒な儀式が必要になるケースがあったり、ファイル単位の呼び出ししか対応できないサーバーもあったりするので、サーバー選択には使用目的を良く考える必要があるだろう。

ビデオサーバーを利用するようになると、配信するビデオコンテンツが少ない場合は、簡単なディレクトリ方式のメニューからでも映像を探し出せる。
しかし増え続けるコンテンツや、内容からの検索を望む場合は、データベースを介して上手に検索できないとまったく機能しない。
データベースを活用できるようにするためには、多くのメタデータを入力しておく必要がある。
このメタデータを入力する手間を大幅に省いたシステムが前序の(i-Topic)である。
多くの映像素材が増え始める兆しがある学校などのシステムに最適なソリューションとして、東京大學にも導入されている。

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