2002年11月アーカイブ

ハイビジョンからHDへ、日本の放送は転換を行ってから3年以上になる。
HD方式も1080iや720Pなど、放送向けやCM、デジタルシネマ制作向けなどをターゲットに明確な絞込みが感じられる。安定運用期に向かって進みだしたHDシステムを見てみよう。


放送機器としてはあたりまえになったHD機器の中で、各社の特徴的な機能と、応用されるシステム構成を筆者の独断で組み立ててみたい。

☆ カメラ
撮影では、フレームレートを4fps~60fpsに可変できるVaricamことデジタルシネマ用カメラAJ-HDC27F(Panasonic)がなんといっても面白い。720Pのプログレッシブ画像を生かした高速度撮影やスロー撮影の生み出す映像はクリエーターの夢をそそる。

☆ ディスクレコーダ
特殊撮影の素材をダイナミックに再生するためには、収録時からディスクレコーダへの記録も現場によっては応用がしやすい。ここでは長年のベストセラー機、X-postHD(新輝)をチョイスしてみたい。フレキシブルな操作性と、ネットワーク対応のコントロール機能が運用を助けてくれる。

☆ ポータブルダウンコンバータ
通常撮影の素材はポータブル環境(ノートブックなどでユビキタス制作)でオフライン編集を行いたいものだ。そのために必要になるのがHD信号からDV信号への変換だ。しかもタイムコードが同期しないと意味が無い。ここではDVC-800(Miranda)のカメラアダプタHDダウンコンバータが最適。ここからダイレクトにDVのディスクレコーダへ、HD撮影しながら変換DV記録すれば、撮影収録と同時にその場でDV編集が可能だ。

☆ ノンリニアHD編集
10bitでHD編集をパソコンで行うことも夢ではなくなった。中でも安価に実現できるのがApple MacintoshにKONA HDを搭載したシステムだ。FinalCutPro3という使い慣れたソフト、しかも同じソフトでオフライン編集可能なので、当然オフラインデータはプロジェクトファイルごと利用できる。

☆ ストレージ
ハイビジョンのデータはとにかくハードディスク容量が必要だ。そのためにAppleは大容量、安価なRaidストレージを参考出品していた。編集システムとはファイバーチャネルで接続している。

☆ HDプレーヤー
出来上がったHD作品も再生環境に敷居が高くては利用しにくい。参考出品のJ-H1(SONY)は、小型のHDCAMコンパクトプレーヤーだ。安価なだけでなく、なにより便利なポイントはXGAの出力端子を標準搭載しているところだ。つまり、身の回りにあるパソコンのモニターをHDCAMのディスプレーに利用できるのだ。当然企業のプレゼンテーションで使用されるプロジェクターにも悩まずに接続できる。

☆ HDネットワーク配信
今年の夏にオープンした東京駅前の新丸ビル。お洒落なランドマークとして話題を呼んでいるが、その中で大型のプラズマディスプレーにHD信号を送っているのが HD over IP のソリューションだ。HDビデオサーバーVSR2000A(SONY)と、MPEG-2エンコーダーBDX2300(SONY)を組み合わせ、サーバとしてMGW3100(Optibase)のIPネットワークゲートウェイから、光ファイバーネットワークの中を23Mbpsで新開発のセットトップボックスBNT-100D(SONY)へ繋いでいる。ここからD端子でプラズマディスプレイに大型HD映像を上映しているのだ。

☆ フィルムオリジネーテッドレストレーション
折角HDの高画質、再生環境が整ってきているのだから、昔のフィルム映像を復活させたいものだ。フィルムも寿命があるもの。早めにデジタルアーカイブへ移行したいが、問題になるのがフィルムの傷などのノイズ、退色などの品質劣化だ。RESTOR(de vinci by Techno House)はフィルム特有のノイズをなんと自動的に除去してオリジナルに近い品質のデジタルデータを生成することができる。Octane2R100000(SGI)上で動作するソフトだが、最大24CPUまでレンダーノードを追加することで、作業の高速化がはかれる。

 

ノンリニア編集の製品群がDVをソフトオンリーで稼動する安価なバージョンに人気を集めている。その中で投入されるハイパワーのバージョンにdpsVelocity-Qがあった。
昨年、放送機器メーカー大手のLEITCH社に買収されたdpsは、豊富な開発資金を得て一気に高性能化を実現したようだ。Velocity-Qは、新設計のQuattrusというボードにより4ストリームと、6グラフィックの同時再生を可能にしている。しかもビデオ信号にAlpha Channelを同時に含むことができるのだ。
Quattrusを採用したdpsVelocity-Qは、4ch 3D DVEをリアルタイムで実現してくれる。
今回大幅に機能強化されたVelocityのバージョン8と合わせて、dpsVelocity-Qのレポートを、InterBEE直前に日本に届けられた貴重なQuattrusをお借りしてお届けしたい。

早速試用してみよう。売り物は4ch 3D DVEだ。これが実にパワフル!
DVEといえば10年ほど前のアナログ編集室に1chのDVEが導入されて、ワイプしかできなかった画面効果に、画期的な演出手法がもたらされた。しかし、1chの悲しさで、多くのやりくりをへて多面合成などを行っていたものだ。ほどなく多チャンネルDVEが導入されると、1chしかDVEの無い編集室はまったく利用しなくなった覚えがある。
今回のdpsVelocity-Qの印象はまさしく、1ch DVEのノンリニアへ戻りたくないという気持ちを強くさせる衝撃的なものだった。

 

プロモーションビデオなどで利用するケースが多い、2画面のピクチャーインピクチャーなどの比較映像をリアルタイムで実現したり、キューブ表現をリアルタイムで実現したり、画面の4分割演出をリアルタイムで実現するなど、従来ではレンダリングを覚悟していた作業だけに、あっけない完成がうれしい限りだ。
面白いのが、4CHを超えたDVEの処理の仕方だ。
例えば8トラックのクリップへDVE処理を施した場合、当然リアルタイムでは再生できない。
ここでレンダリングをさせると、従来だと1フレームごと画面を計算して相当の計算時間を覚悟しなくてはならないが、dpsVelocity-Qでは、まったく違ったアプローチで処理を行うのだ。
はじめにリアルタイムの限界である4トラック分のDVE処理を実時間分で行う。次に残りの4トラック分を同じく実時間分で行うのだ。つまり、2回の再生時間で8トラック分のレンダリングが終了してしまうのだ。

dpsVelocity-Qの特徴は、そのパワフルさにあるが、バァージョン8になったVelocityの新機能もあわせて注目してみたい。
ソースコードから見直されたVelocityは、まさに痒いところへ手が届くような進歩をしている。


目に付く大きな変更点はマルチタイムラインの導入だ。他のソフトで多く可能な機能なので、待ちわびていた感があるが、複数のタイムライン、複数の素材Galleryをタブで切り替えるだけで持つことができる。これによって他のタイムラインと比較しながら作業を行うことができる。クリップやエフェクトの情報など、複数の要素をまとめてコピー&ペーストで移動することもできる。これは便利だ。また、バッチキャプチャーで任意のGalleryへクリップを振り分けることを設定することもできる。これによってカテゴリー別に分けたり、シーン別に集めたりしやすくなった。

新機能として「Multicamera Editor」マルチカメラエディットの実装だ。同じタイムコード素材を複数タイムラインに並べて同時に再生させ、スイッチで切り替えるように編集をリアルタイムに進めていくことができる。もちろんコマ送りをしながら切り替えポイントを微調整することも可能だ。標準のdpsVelocityでは2ストリーム。dpsVelocity-Qでは4ストリーム同時に実行できる。


あわせて便利な機能としてショートカットキーのカスタマイズができるようになった。
先のマルチカメラの切り替えでも、使いやすいキーを割り当てられるので、迅速な操作が可能だ。

タイムライン関連の大幅な改善で、編集時の現在地点把握や、範囲変更などが簡単になるなど、使いやすさは増している。
複数のタイムライントラックの幅をショートカットキーで自由に変更できるようになったので、省スペースで表示したり拡大したりすることも自在だ。頻繁に使用しないトラックを非表示にすることもできるようになり、作業時の誤操作を防ぎやすくなった。

希望が多かったトラックのミュート、ソロの設定も可能になり、さらにロック機能も追加されて実際の編集作業をよりやすくしている。

また、従来のV1トラック、トランジション、V2トラックで運用するA/Bロール編集の加えて、すべてを同一トラックに配置するシングルトラック編集のインターフェースも追加された。
これは、つながるクリップを重ねるように配置して流れるように編集を続けることができる。

さらにうれしい機能が追加された。V1トラック、V2トラックのクリップ入れ替え機能だ。
編集を進めていくと、クリップの追加などでA/Bの連続が崩れる場合が、ままあるものだ。
片側に連続してトランジションがかけられなくなった場合など、残りのクリップをA/B入れ替えることで編集を続行できるようになる。

同時に複数トラックの複数クリップに対してエフェクトをかけたり、まとめてカットしたりできるようになった点も評価したい。

エフェクトのキーフレーム設定でも、%単位の調整に加えて、フレーム単位の調整も出来るようになっている。

オーディオトラック表示も、従来ステレオ4トラック表示が標準であったが、モノラル8トラック表示に変更され、トラック毎にパニングなどの設定が容易になった。
オーディオの波形表示スピードも改善されたし、トリムウィンドウ内で波形表示がされるようになったので、細かな編集が容易に行えるようになった。


加えてプレイバック中にVUメーター横にあるフェーダーを直接操作することで、リアルタイムに操作を記録することが出来るようになった。

今回の試用には4ストリームを十分に送りださえるストレージとしてMedea社の新製品VideoRaid RTRをお借りしたが、5ドライブのRaid3仕様で快適なパフォーマンスを示してくれた。

大幅な進歩を遂げて登場したdpsVelocity8、そして強力なQuattrusボードのマルチDVEパワーは、新しい時代に入ったノンリニアシステムの姿を象徴しているようだ。

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