「二人で作れるCS番組制作レポート」

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ReelTime NITRO v2.01 & Premiere5.1RT 

1999-01-24

尾上 泰夫


  1. 低予算と短時間でのCS番組制作
  2. 少人数での実験制作
  3. インターネットで情報収集
  4. 取材とminiDVでの撮影
  5. ノンリニア編集
  6. MA
  7. βカム納品
  8. 編集の後に


8月号、11月号でReelTimeのレポートをお届けしたが、実際のパフォーマンスは制作現場での評価が重要だ。今月はCS番組の制作現場でReelTime NITROと、インターネットをどのように利用したかレポートする。

 

低予算と短時間でのCS番組制作

御存知のようにCS番組制作は採算をあわせることが大変だ。民放の番組からは桁違いの制作費で1時間番組を納めなければならない。しかも受発注契約での制作では版権も残らない。制作プロダクションとしては頭の痛い問題だ。

従来の機材と外注体制では採算の合わない事は明白だ。アプローチを変えて取り組まないと赤字を増やすだけである。そこで、2つの方法が考えられる。

まず、スタッフ分業での流れ作業に徹底したコストダウン。これは大量生産出来る時に向いたやり方だろう。

次に、ワンマンオペレーションに徹底した少人数、廉価機材でのコストダウン。専門的な内容や、スポット制作での対応が可能だ。

今回の制作はスポットでの依頼なので、実験的に少人数制作がどこまで可能か検証してみた。

 

少人数での実験制作

番組制作に必要な作業は同時進行が必要な場合が多い。些細な作業でも完全に1人で行う事は困難が予想される。最低人員として2人を確保して、出来る限り1人で進行できるように考えてみた。実験に先立って、制作を担当した2人を紹介しておこう。

1人は民放のニュースカメラ、中継番組のディレクション、ドキュメンタリー番組の演出、スタジオ編集(オペレーション)経験を持つ何でも屋(筆者)である。

もう1人はコンピュータに詳しく、インターネットを利用したリサーチには定評のある女性である。レポーターにも性格が向いている。

今回は台東区谷中のウォッチングだ。井戸の関連も調べてみたい。

さっそくリサーチをしてみよう。

 

インターネットで情報収集

取材対象の情報を収集する場合、従来ならすぐに書店に走るところだが、今回は書籍に加えてインターネットを利用してWebでリサーチを行った。これが実に有効であった。

<Yahooの検索画面>

最初にYahooで「谷中」を探してみた。32件ヒットした。サーチエンジンでは意味を考えずに字面だけで探すので「世田谷中学校」なんて物もヒットしてしまう。

<再度検索した画面>

井戸の情報もほしいので「谷中 井戸」とand検索も行ってみると77件のヒットがあった。他のサーチエンジンも同様に検索しておこう。

<自分で利用するブックマーク画面>

有用な情報を集めて番組用のブックマークを作っておくと便利だ。井戸に対する情報は専門の工事会社の案内が参考になる。

 

<谷中芸工展のホームページ>

名所や旧跡の案内は観光ガイドなどが有効だ。

<谷中のホームページ>

さらに、個人のホームページを中心にマークしておくと取材に有効な連絡先になる。

早速、電子メールで取材先に連絡。ロケーションハンティングの日程を調整する。予算的にも日程的にも時間の貴重な制作には電子メールは大変に重宝だ。電話では取り次いでももらえない人と直接交渉できるのも強みだ。

写真でのイメージと収録の可能性が把握できたら実際に現地へ行ってみよう。この段階ではラフな構成案を箇条書きにした程度だ。現地で確認した取材先をプロットにして、さらに詳細な構成台本を組み立てておこう。

作成した構成台本は編集構成、ナレーション原稿制作にも利用できる。

ここまでの作業で特筆しておきたいのはイントラネットサーバーの存在だ。

<弊社のログイン画面>

弊社(FTT)ではスタッフ間のコミュニケーションにFirstClassと呼ばれるサーバーシステムを利用している。制作に必要な情報は、すべてこのサーバーのプロジェクト会議室に保存されているのだ。

リサーチの結果や取材先からの連絡はすべて一元的に管理が可能だ。

1人が事務所に残ってリサーチを続ける間に、行き違い無しにもう1人が現地でモバイルを活用してのロケハンを安心して行えるのも、このシステムのバックアップがあってこそだ。

<履歴の閲覧画面>

メッセージを相手がいつ読んでくれたかの履歴が正確に把握可能なので、電子メールだけでは出来ない最新の情報を安心して利用できる。特に台本はバージョンアップが頻繁に行われるので更新管理にも有効な方法だ。

人数が少なく留守がちな制作プロダクションや、外部スタッフ間の詳細な連絡には不可欠な通信環境だろう。

 

取材とminiDVでの撮影

最近の家庭用デジタルビデオ機材は急速に性能を上げ放送品質に迫る画質を実現している。しかも安価に。

<使用したカメラとフィルター類>

DCR-VX1000(MiniDV)の品質はCSなどのMPEG2でエンコードして放送される番組には十分な画質だ。

レンズには不満が多いが、最近では便利なワイド、ミニフィッシュなどのコンバーターが充実してきたので、カスタムフィルターなども利用しながら比較的自由な絵作りを行うことが出来る。

泣きどころは貧弱なマイクだ。音声の収録に関しては、期待できない。しかし、撮影に音声マンをつけることは今回は見送ることにした。レポーターのインタービュー収録で外部マイクを音源に近づけてもらい、S/Nを稼ぐことにする。

軽量で随所に利用できるバッテリーライトは有効な小道具だ。室内で人物の顔色などを良好にすることが出来た。

家庭用の機材は、長時間録画できるテープとバッテリーなど、小人数で活動するには実にありがたい性能も持っている

さて、撮影だが、インサートカットはともかく、1時間番組を細かくカット割りして収録するには撮影時間が厳しい。

台本もストーリープロットを書き込む時間が足りない。

こうなると被写体の話を長回しで撮影するしか時間が持たなくなってくる。

また、話の内容にインサートカットを差し込むにしても、椅子に座った座談会の収録では退屈なので、とにかく現場に出てきて身振り手振りの動きを撮影させてもらうことにする。

テーマが現地の内容なので、歩きながら、ポイントを案内していただくと、思わぬ話が飛び出てきたりするものだ。

通り掛かりの人との対話や、いきなり飛び込んだ知人の家など、予定した内容よりもこの方が面白い場合が多いのは勢いのおかげだろう。

実際には1人で行えるインサート撮影と、レポーター込みで2人ロケするケースに別れることになった。

 

ノンリニア編集

miniDVで撮影してきた素材をノンリニアで編集するプロセスは、人によってさまざまなやり方があると思う。弊社ではタイムコードを重視した記録優先の作業を行っている。

<新しいPremiere5.1RT>

今回利用するノンリニアシステムは、待望のバージョンアップを完了したPremiere5.1RT と、ReelTime NITRO v2.01で、デュアルストリームのリアルタイム再生を常時サポートしてくれる。

ここでノンリニア編集で利用するデータファイルを考えてみよう。他の多くのシステムも名前こそ違うが同様のファイルを有しているので参考にしてほしい。

1:プロジェクトファイル:ビデオ編集の情報と、時間軸に関わるメディアファイルやテロップファイルの名前、保存場所などの情報を記録している。

2:メディアファイル:デジタイズされた映像、音声のデータ本体。

3:バッチキャプチャーファイル:ビデオテープの名称、各クリップのタイムコードとメディアファイル名を関連付けたリストを記録している。

4:テロップファイル:スーパーインポーズする文字情報などのファイル。編集できるテキスト情報と、マッピングされた画像データなどがある。

5:ライブラリファイル:メディアファイルを複数のプロジェクトで使用するときに登録する。バッチキャプチャーされたファイルリストはここに登録される。

6:シーケンスファイル:IN OUTの設定されたクリップ集を保存しておくときに利用すると便利だ。

 

この中でバックアップが重要なのは(2:メディアファイル)を除いた全部である。これだけならテキストファイルも同然なのでフロッピーでも保管できる。筆者はネットワーク接続しているサーバーにすぐコピー保存している。

数ギガに及ぶメディアファイルは他のメディアにコピーするだけ無駄である。なぜなら(3:バッチキャプチャーファイル)で簡単に再現できるからだ。例えばテープストリーマーでメディアファイルをコピー保存し、レストアする時間を考えたらビデオテープから再度自動でデジタイズする方が早いからだ。

保全の意味からもビデオの取り込みは必ずバッチキャプチャーのデータを作って行うようにしたい。

<バッチキャプチャーのデータリスト>

バッチキャプチャーのデータにも作り方が2通りある。

上の方が素材カットのOK出しを行ったデータだ。

しかし、インタビューシーンなど話の内容を削る場所が決まっていない場合などは、一先ず全部素材を取込んで置きたい場合もある。下の方は5分おきにクリップを分割して取込むように画面も見ないでキャプチャーデータを設定してある。念のため1秒の食い込みを作ってあるが、同ポジが確実につながるので、利用するシーンがクリップをまたいでいても心配要らない。

この設定は他の仕事でも取り込みに使えるので重宝だ。

<ReelTimeの圧縮レート設定画面>

バッチキャプチャーのデータができたら取り込む総時間とディスクの残量を考えて圧縮レートを決める。

設定を変更するとディスクの残り収録時間がすぐに確認できる。

今回は5時間くらいの素材があったので高圧縮(1M/s)でオフライン素材の自動取り込みを行なった。

納品時にはβカム品質(6M/s)の状態で完成カットだけを再度取込むことでディスク容量を節約できる。この方法は納品テープ作成の所で詳しく説明する。

圧縮は数値だけでなく実際に自分の目で確認してほしい。この半年くらいの間で、ずいぶん同じ圧縮でも画質が向上しているのだ。

<プレイバックがReelTimeによって行われる>

また、ReelTime(Premiere)では、便利なレンダリング時間不要のリアルタイム再生を行なう他、メディアファイルの名前を自分で管理できるのも筆者は気に入っている。

アビッドやMedia100では、勝手にファイル名を付ける上に、膨大なプレビューファイルやレンダリングファイルを作ってくれるからだ。(Premiere単体では同様な問題がある)

リアルタイムで再生を行うメリットに素材以外のファイルを作る必要の無いことも大きな要因としてあげられる。

ディスク容量が厳しいときに、どのファイルを消していいのかが簡単に分かることは、とてもうれしい。

<ReelTimeでの編集画面>

編集自体は至極簡単だ。必要なカットを選び出したらIN OUTをマークしてタイムラインに移動すればよいのだ。

この辺はまったく標準のPreminereと変わることが無い。

ただ、ReelTimeではプレイバックがエフェクトを入れてもタイトルを入れてもレンダリング無しにリアルタイムで動くのだ。

さて、1時間番組の編集だが、納品ではCM用の黒味が入る流し編集になる。気を付けておきたいのは放送番組なのでタイムコードが、すべてドロップフレームで計算する必要がある点だ。

<納品用のCueシート>

これは番組のCueシートだ。頭と中と後に3回のCMを含でいるので、本編はオープニング、本編ロール1、本編ロール2、エンディングの4ブロックとなる。

プロジェクトファイルも、それぞれブロックに分けて作成すると効率がよいだろう。計算間違いをしないように何度も確認してほしい。各ブロックはCMなどの乗り移り前後に3秒の「Cushion」を入れて編集するので各ブロックは実尺より6秒多くなるのだ。

<簡単なエフェクト設定>

ReelTime NITROでは3次元効果や2次元のワイプなど400種類を超える設定がすべてリアルタイムに再生可能になっている。

<常時画面で再生状況をチェックできるモニター>

再生時のデータ転送状態はモニターに表示される。スピードの遅いディスクに間違ってメディアファイルを置いた場合などはエラーを起こすだろう。すべての設定が正常であればDroppedは常に0の状態である。

<オープニングの人物紹介で利用した3D効果>

効果的な3次元エフェクトで、見る人の興味を引くようなオープニングが短時間で制作できる。従来のスタジオ編集を考えると時代が変わったと感じる。

細かなパラメータ変更には別途アプリケーションが必要になるが、現実には使用することはほとんどないだろう。

<スーパーテロップの入力は分業で>

編集中にテロップなどのデータ入力は分業で行なえると効率がよい。iMacもネットワークでサーバーにつながっている。Adobe PremiereのテロップファイルはWindowsでもMacでも共通なのが強みだ。

<NITROバンドルの高機能テロップソフトTitleDEKO>

ReelTime NITROのバンドルソフトでTitleDEKOと呼ばれる高機能なテロップソフトが標準で添付されるようになった。

メニューから直接呼び出せるので大変便利だ。

<漢字TTフォントも多数使える>

標準のWindowsNT環境では日本語フォントもゴシック、明朝の2種類しか利用できない。

そこで、筆者は汎用の葉書印刷ソフトである「筆自慢12」をインストールして22種類ほどの日本語TTフォントを強化している。このソフトは店頭でも6000円ほどで入手できるから、日本語のテロップ書体に悩まれている方はぜひ試してみるとよいだろう。

<簡単に枕なども付けられる>

TitleDEKOを利用することで、簡単にバックの枠や枕をつけることができる。もちろん1文字単位での回転や変形もできる。多くのソフトは変形した後の文字編集ができなくなるが、TitleDEKOでは編集できるのもありがたい。

ちなみにPINNACLE社のDEKOシリーズは、上位にFX DEKOと呼ばれる放送用高機能3次元キャラクタージェネレーターがあり、オープニングイメージ作成などで高い評価を受けている。

ここまでの編集で完成の尺(時間)が出ているはずである。

ナレーション原稿の用意は、構成案の同じ原稿から拡張していった。効果音楽の選曲も十分に楽しめた。

 

MA

さて、ここまでは外注なしでやってこれたが、さすがにナレーターはお願いすることになった。今回、唯一の社外スタッフである。録音スタジオを使わずに社内での収録だ。

局プロデューサーの試写、原稿チェックも同時に行なって納品への最後の仕上げ作業である。

ナレーションの収録も外部マイクでDVカメラに録音した。

ここで筆者は、録音している内容に合わせて台本のコメントを撮影しておいた。こうしておけば、編集時にコメントを探す手間が大幅に減るのだ。なにしろ再生しなくてもコメントの位置が見て分かるのだから。

<ナレーションタイミングも波形で確認>

コメントの位置が分かったら正確なタイミングを波形からマークしよう。このクリップを必要なタイムラインの場所に落とし込むだけである。修正も見たとおりに前後ずらすだけで微調整ができてしまう。

<NAとMEとのバランスも簡単>

NAとMEのバランスも簡単に合わせることができる。

正確な位置にナレーションが決まったら、同時に発生している音楽やノイズを押さえる必要がある。

この作業もご覧のようにその部分のボリュームラインを下げるだけで簡単に完了だ。

 

βカム納品

試写も通過して尺の出たプロジェクトファイルは、オフライン品質から、放送品質にリキャプチャリングを行なうことになる。

<メニューからプロジェクトトリマーを選択>

プロジェクトトリマーを利用することで、プロジェクトファイルの情報から、新しいメディアファイルのリンクを持ったプロジェクトファイルと、そのリンクするべきメディアファイルをキャプチャーできるバッチキャプチャーファイルが生成される。

<プロジェクトトリマーの設定画面>

多少の調整代を残して「Batch List」を作るように設定して新しいプロジェクトファイルを作成する。

ここで最初に取込んだオフライン品質のメディアファイルは消してしまうことができる。後はバッチキャプチャーファイルが自動的に取込んでくれたメディアファイルをもとに、新しいプロジェクトファイルを再生すればよいのだ。

これで動作を確認したら、いよいよ納品テープに落とす作業だ。

納品フォーマットはβカムSPの1時間テープで、58分の本編に120秒のCM分の黒味を含んだ流し編集である。

<デッキ制御はProVTR6.1を利用する>

事前に局納品用βカムテープを正副2本作成する準備があるのだ。まず、 0IREの黒味と、58分30秒からのドロップフレームのタイムコードを記録しておく。

書き出しのデッキ制御もProVTR6.1を利用してコントロールを行っているが、インサート編集で設定を行なうからだ。

<ProVTR6.1の制御画面>

規定の1分カラーバーと音声調整用の1KHz基準信号、さらにタイトルのクレジットを15秒録画したら、いよいよオープニングのテープ落しだ。3秒の「Cushion」を用意しているので、テープの59分57秒にIN点を打つ。この要領で順次Cueシートの時間を確認しながら、本編をすべてテープに録画すれば編集も終了だ。

 

編集の後に

制作自体は2人いれば十分に可能であるが、何も権利が残らない制作には大いに疑問を感じる所だ。

編集が終わり、テープを局に納品しただけで制作が終わったわけではない。取材に協力していただいた方々への、心からのお礼で幕を閉じたいと思う。

 

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このブログ記事について

このページは、DreamCraft Staffが1999年1月24日 16:33に書いたブログ記事です。

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